陽気なタイの複雑な事情

陽気なタイの複雑な事情

今回の旅行で実際に「見る」ということは何よりも大切なことだと改めて実感することができた。

タイ航空でバンコクへ。トランジェットでバンコク国際空港に降りた。飛行機を降りて空港内へ入った瞬間、独特のスパイシーな香りに包まれ、正直「うっ」となった。バンコク国際空港は今まで降りたことのある空港とは違い、どこかのんびりしている印象だった。なぜなら清掃員は座って外を眺めていたし、横になってウトウトしている人もいた。せわしなくしているのは観光客だけだった。

バンコクからチェンマイへ、ちょうど夕暮れ時に到着した。空港からホテルまで16才くらいの男の子が案内してくれた。日本語が上手で笑顔がキラキラのかわいい男の子だった。

ホテルに着いてから、疲れていたのでマッサージをしてもらおうとホテル近くのSPAに出掛けた。タイではタイ式マッサージが有名で、料金は日本ではあり得ないほどの安さだった。帰る頃、すでに夜の10時を回っていたので夕食は手短に済まそそうと、コンビニでインスタントラーメン、屋台でおかずを買ってホテルへ戻った。食べると「……まずい」。ラーメンもおかずも甘酸っぱ辛い。何よりも匂いが駄目だった。最初に食べたタイ・フードが間違いで、結局、旅行中はタイ・フード恐怖症に陥っていた。

陽気なタイの複雑な事情

チェンマイでの交通手段は『トゥクトゥク』という三輪バイクのタクシーと『ソンテウ』という乗り合いタクシーのどちらかだった。どちらも乗る前に値段交渉を行う。特に観光客には高い価格をふっかけてくる。

実際、最初に乗ったトゥクトゥクの運転手は倍の値段だった。二日目に乗ったトゥクトゥクの運転手は最悪で、値切ったために(それでも相場程度)目的地に着くまで延々と日本語で「ニホンジンノオンナハ、ケチダ!!」と言われ続けた。それからトゥクトゥクに乗るのはやめにした。

ソンテウは乗り合いのため色々な人が乗ってきて面白かった。何よりも運転手に話し掛けられないのが快適だった。チェンマイの道路は交通量が多く排気ガスがものすごかった。夕方のラッシュは特にすごく、排気ガスにまかれていた。ビュンビュン走るソンテウの車内から見る町の景色は最後まで飽きることがなかった。

陽気なタイの複雑な事情

チェンマイの街は城壁に囲まれた旧市街を中心に、その周辺を新市街が囲うようにして形成されている。旧市街からまっすぐピン川まで東に走る道路がターペー通りで、その通りに垂直に交わっているチャングラン通り沿いにナイトバザールがある。ターペー通り沿いの一本南側のロイクロ通りで昼間は買い物をした。ロイクロ通りには小さなお店が並んでいた。どの店もこじんまりとしてしていた。どの店先にも神が祭られ脇には植物が植えられていた。何気ない景色も珍しく、それがとてもかわいらしい。町中には犬がそこら辺を歩いていた。主人の後ろをついて行く犬や道路にゴロンと横になっている犬もいた。自由気ままでとても幸せそうだった。

買い物をしている途中、いきなりのスコール。急いで屋根のあるところへ避難した。しばらく座ってボーっと街中を眺めていた。「同じアジアなのに日本と全く違うなぁ。」と当たり前のことをしみじみと感じた。

夜はナイトバザールに出掛けた。歩道にずらりと並んだ露店は昼間ののんびりした雰囲気とは一変してものすごい賑わいを見せていた。高く積まれた衣料品や雑貨、まさしく巨大マーケット。一晩では回り切れず、二日間もナイトバザールへ出掛けた。

チェンマイではシルバーパーツ、淡い色合いでとてもかわいいカレン族の織物、バッグ、ポーチなど山ほど買い物をした。日本では見たことのないものも沢山あった。どれも手の込んだ素敵なものだった。

今回の旅行は何の計画も立てず、ひたすらに街中をぶらぶらしていた。その中で私はとても大切なことに気付かされた。

陽気なタイの複雑な事情

タイは物価が安い、というのは非常に有名な話だ、ということは当然、貧富の差もあり、貧しい人々もいる。私が街に出掛けた初日、道端で座っている人がいた。その人は空き缶を片手に私に話し掛けてきた。私は本当にびっくりして動揺してしまった。そんな場面が一度だけでなく何度もあった。道端のゴミをあさる人、両足が無く手だけで地面を這っている人、まっすぐ歩けない少女が私の後ろをついてきたこともあった。ナイトバザールの帰りにロイクロ通りを通るとバーにたくさんのタイ人女性が集まっていた。一台二台とその前に外国人の男性を乗せた車がゆっくりと走っていくと彼女達は立ち上がって手を振ったり何やら叫んでいた。売春の現場……!? 目の前で当たり前のように繰り広げられるその光景に目を疑った。貧しさ故に起こる非現実的な出来事は紛れもない事実だった。

「世界が平和になりますように。」

これは戦争がなくなったりすることだけではない。広く深く難しい問題だと旅をして実感した。チェンマイであまりにも衝撃的な場面に直面してしまったために、帰国後しばらく複雑な気持ちでいっぱいだった。

旅で困るのは言葉。タイ人は日本人観光客が多いため、ほんの少しの日本語を話せる。しかし、少し立ち入った話になるとチンプンカンプンだった。それでもお互い一生懸命でなんだかおもしろかった。滞在期間が短すぎて人と深く知り合うことは出来なかったが、本当に色々な人に出会った。私の勝手なタイ人の印象は「自由気ままで陽気」。女性よりも男性の方がこの印象が強かった。とにかくニコニコ(ニヤニヤ?)している人が多かった。帰りに空港までハイテンションでしゃべり続け笑っていた。内容はナイトバザール周辺が冠水しているという笑えない内容だった。

陽気なタイの複雑な事情

無計画な旅だったがのんびりと過ごせる良い旅だった。次回は美味しいタイ・フードを食べよう。

  • 陽気なタイの複雑な事情
  • チャイハネ 浜松店 店長 足立賀絵
  • シルクロード舞踏館104号 2006.04.01掲載